プロローグ

 22世紀──増え続け、飢え続ける人類は、資源としての地球を使い切り、生命活動の拠点を太陽系全体に拡げつつあった。火星・金星には、人類が住むための環境改造「テラフォーミング」が施され、スペースコロニー建造に適している「ラグランジュポイント」には作れる限りのスペースコロニーが浮かんでいた。  
  火星軌道から金星軌道までを居住区とした新地球圏が形成され、その他の惑星からも貪欲に資源を手に入れながら、人類は増え続けていたのである。   

 が、宇宙に進出して2世紀たつと、太陽系の資源そのものが枯渇し始め、採掘・利用の量コストのバランスを保てる資源は、木製のヘリウムを残すのみとなってしまった。   
全てのコロニー、植民星の人口も限界を超え、21世紀の初頭依頼の大規模な食糧危機が再び地球圏を覆いつくしつつあった。

  かくして資源や食料をめぐって太陽系規模の大規模な紛争が勃発。書く汚染により金星と火星は再び市の星となり、また、多くの国家やコロニーが消滅。地球本星も、全体的な汚染は免れたものの深刻な核汚染により、居住可能地域が大幅に減少してしまった。   

 ……それでも人類は生存を続けていた。地球圏自体は大きく収縮することになったが、地球に戻った人類は、新たなる世界秩序の手綱として、国連の機構をより強化した「地球連邦」を発足、初めての地球圏「統一国家」という理想を目指したのだ。が、理想への道のりは険しく、結局人類は、連邦政府のゆるい統治の元、実質的にコープと呼ばれる独立的な色合いの濃い5つの経済圏に分離・共存することになったのである

  • 汎アジアンコープ
  •  中国とロシアが融合したために、残ったアジア地域の経済圏が急遽連合を組んだもの。資源の枯渇が最も激しく、技術力・生産力以外は秀でた部分がないのでほかの経済圏にリードされている。

  • インターアメリカーナ
  •  北米経済圏が中南米諸国を吸収した経済圏。基本的には以前のアメリカ合衆国が拡大したものだが、核汚染がもっとも深刻な地域でもあり、以前のような超大国的能力はない。 

  • ユーロコンツェルン
  •  母体はEU、欧州連合。ロシアとの融合が果たせなかったために、経済圏の中では勢力が弱い。現在もいくつかのスペースコロニーを所有している。 

  • CCC
  •  中国とロシアが融合した超大型の経済圏。埋蔵資源に若干余裕があり、生産力も高い。中核となった中国(China)、復活の機運が叫ばれ始めていたロシアの全身である旧ソ連(CCCP)、コープ(Corp)のそれぞれの頭文字Cをつなげてこのような通称で呼ばれる。インターアメリカーナがライバル視している経済圏である。 

  • 太平洋アラビウム
  •  アフリカ大陸諸国とユーロコンツェルンからはじかれた中東諸国が融合した経済圏に、その後オセアニア諸国が加わったもの。資源に余裕があるが、経済圏内での足並みがそろっていないので、インターアメリカーナに迫ることができない。 

     各経済圏はギリギリの資源と食料で維持されており、時には紛争やテロが発生することも多くなっていた。ここに至って地球連邦は、再び縮小してしまった人類の生存域を、もはや限界に達していると判断。 そんな折り、マイクロブラックホールを利用した超高速航法が実用化にこぎつける。距離に限界はあるものの、いくつかの構成系までは1年を待たずに到達できるようになったのだ。しかし、ほとんどの惑星は開発に適さず、多くの調査隊も消息を絶っていた。苦難に満ちた調査の末、地球連邦は、開発可能な対象として、いくつかの惑星を候補に上げたのである。

     各経済圏は、自らの生き残りを賭け、それぞれが到達した惑星の資源開発を開始、開発自体は安全性の面からメックと呼ばれる無人機会で行われた。この技術革新は、再び人類を栄華と平和な世界に導くと思われたが、実際には皮肉な結末を招いた。経済圏同士の熾烈な資源獲得紛争の勃発である。  

     争いのきっかけは些細なことであった。太平洋アラビウムがインターアメリカーナの無人開発システムに対して攻撃を行ったのである。公式には自動セキュリティシステムの故障による偶発事故というけんかいがなされたが、一方で太平洋アラビウム過激派による意図的な妨害工作という陰謀説もまことしやかに囁かれた。いずれにしても、結果的にインターアメリカーナは大損害を被り、その惑星の開発を断念せざるを得なくなった。  
     この事件を引き金に、各経済圏は疑心暗鬼にとり憑かれ、おのが欲望と利潤、そして存亡を賭け、「戦争状態」へと突入したのである。各経済圏は、あらゆる手段で他経済圏に対して妨害工作を始めた。
     幸いなことに、環境汚染が悪化する地球は迂闊に戦場にできず、かつて人類全体を滅亡の危機に追いやった核兵器のような大量破壊兵器も完全廃棄されていた。また、対人平気の使用はこの時代の人類のモラルが許さなかった。そのため、各経済圏はあくまで、他経済圏の能力の低下を目指すことになる、相手の採掘機材・設備をもっぱら攻撃の対象とすることになった。そのけっか、外宇宙の惑星群が主たる戦場となっていった。これは人類が始めて体験する、風変わりな「戦争」でもあった。  

     かくして、各惑星上での情け容赦ない開発戦争が始まった。自らの開発地域や資産を、自らの武力で守らなければならないことから、ある人はこれを、無法と自由の入り混じったアメリカ大陸開拓史になぞらえたりもした。  

     あなたは地球圏で最も多くの人口と貧困層を抱える汎アジアンコープの代表として、外枠製の開発戦争に参加することになる。競争に敗れれば、飢餓によって敗戦が勃発することになるだろう。経済圏の資源がかき集められ、今、開発という名の厳しい戦争が始まる。    

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